No.54(2005年11月号から)

大増税受け入れの世論形成狙う政府

高まる歳出削減論議


 「改革を止めるな」という翼賛選挙が終わってみれば、今度は大増税に向けた議論の“噴出”である。

 自民党の財政改革研究会(会長与謝野政調会長)が2ケタ(12〜15%)の消費税引き上げを提案し、谷垣財務相が「消費税増税は避けて通れない道だ」と語り、サラリーマンへの定率減税全廃を06年度に決め、07年度には消費税増税の法案を提出する考えを表明した。

 財務省内には「消費税増税に理解を得るには社会保障費と結びつけるしかない」との考えが強まっていると報じられている。

 もし消費税の「社会保障目的税化」を進めれば、消費税率は14〜15%になると言われている。

 所得税・住民税の定率減税の廃止でサラリーマンは3.3兆円もの増税になるというのに同時期に始まった法人税率の引き下げや最高税率の引き下げなど、企業や金持ちへの減税の廃止の声は出ず、逆に経済界からは減税継続の要請が出ているという。

 そしてここに来て、経済同友会の北城代表幹事などから「より抜本的な改革で大幅な歳出削減が必要」との声が出ている。また竹中総務相や各閣僚が「消費税増税よりも歳出削減が先だ」との発言が続出し始めた。

 今年10月31日には障害者に対する「自立支援法」が成立した。同法は自立の名で「応益負担」として自己負担を強化していくものである。また厚生労働省は「三位一体の改革」と称して生活保護費の国の負担を半分に引き下げることを地方に提示した。

 大増税の前に「ムダな歳出を削減せよ」と主張して福祉を切り捨てることで人民に痛みを押しつければ、“そんなに財政が苦しいのなら増税はやむを得ない”という方向へ人々の認識を追い込む狙いがある。つまり、歳出削減論議は大増税を国民に受け入れさせるための国民的合意を形成しようとするねらいを持っているのである。

 財界は「連結納税制度」でこの3年間に約9295億円の減税を受けているのに、来年度期限切れとなる研究開発減税(5880億円)やIT投資促進減税(5650億円)の継続を政府に求めている。彼らは総選挙での自民大勝を受けて、自分たち大企業と金持ちには大減税を続けながら、福祉を切り捨て、定率減税を廃止し、消費税大増税を企んでいるのである。

 税金の先取り請求権である国債発行(約700兆円)で利益を受けたのは大企業と金持ちであるのに、彼らには減税であり、逆に不況と賃下げで生活が苦しくなっている労働者・人民に大増税というのはスジが通らない。財政赤字にたいしては大企業と金持ちへの大増税で対処すべきである。

 消費税を2ケタにする大衆課税は、人民の消費購買力を奪い、消費不況を招くことになる。税金は金持ちと大企業からとるのが当たり前なのである。

 「日本の法人税の水準が欧州諸国や中国と比べてもなお高率だ」(朝日新聞)というのはデタラメである。財政赤字は国家財政を食い物にした連中が責任を負うべきなのである。

 政府・自民党がマスコミを大動員して「歳出改革を先送りさせたまま増税に走ることは許されない」(毎日新聞社説)「次には歳出削減への揺るがぬ決意を示すことだ」(朝日新聞社説)との歳出削減論が、労働者・人民を福祉の切り下げで痛めつけることで、大増税導入の下地作りを進めていることを暴露しなければならない。