No.54(2005年11月号から)

アメリカのための参戦に道開く“属国改憲案”

自民改憲案の売国的本質


 自民党は10月28日、現行憲法を大幅に「改正」するための「党新憲法草案」を決定した。その主な内容は、現行憲法前文の侵略戦争への反省や不戦への決意等を削除し、国民が「国防の責務を共有する」としている。また「国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため協力し合う」ことを明記し、平和の口実でアメリカと軍事協力ができるようにしている。

 改憲の中心である9条「改正」では「戦争放棄」の1項は残したものの2項の「戦力は保持しない」「交戦権はこれを認めない」を削除し、改憲案9条2項で「自衛軍の保持」を明記して集団的自衛権の行使に道を開き、自衛軍に「国際平和の確保のための国際協調活動」を認めることで武力行使を伴う海外派兵に道を開いている。

 また草案は「軍事裁判所を設置する」規定を新設している。これは戦争遂行のためのものである。つまり自民党改憲案は、アメリカが日本の力を自己の戦略に取り込むために求めている集団的自衛権を改憲によって認め、アメリカの戦争に自衛隊を動員するための改憲案と断言できる。

 現憲法の9条と98条は明確に従属条項である。9条の非武装は日本の防衛をアメリカにゆだねることで対米従属を軍事面で保障するものである。98条は条約を「誠実に遵守することを必要とする」と規定しており、日米安保条約を絶対のものにすることで、法律面から対米従属を規定している。

 このうち9条の2項だけ「改正」するということは、アメリカの従属状態のまま戦争体制の法整備をするということである。つまり9条改憲は、安全保障基本法や国際協力基本法を前提として、アメリカの戦争に自衛隊を動員するものであり、「国民の国防の責務」は将来の徴兵制立法に道を開いているのである。

 さらに重要なことは、現在進められている日米同盟の強化、トランスフォーメーションとセットとなっていることである。現在米軍と自衛隊の軍事一体化が、アメリカの指揮権の下で進められており、草案はこれに合法性を付与することが狙いなのである。

 日本の自立のための改憲なら日米安保条約を最高法規にする98条2項をこそ改正すべきである。条約は情勢にそぐわなくなれば破棄されるのが普通であるのに、「これ(条約)を誠実に遵守」すれば日米安保条約が事実上最高法規になってしまう。これでは日本は永久にアメリカの属国である。

 日本は資源がなく貿易立国を国是としているのに、多極化の時代にアメリカの戦争路線に追随すれば、世界で孤立しかねないのである。時代は多極化へと進んでおり、日本は対米自立で全方位外交による平和主義を堅持することが。貿易立国の国是にも合致するのである。

 多極化の時代には、アメリカがすべてではないのである。日本はアメリカ一辺倒の外交から多極外交へと重点を移し、自立のための必要条件を整え、属国ゆえのアメリカの搾取から脱出しなければならない。日本は400兆円もの米国債購入という形で上納金を取られ、“思いやり予算”等の形で国家予算を略奪されている。

 小泉はアメリカの手先として、橋本が首相のとき「アメリカ国債を売りたいと思う時がある」と発言したことを理由に橋本派を叩き潰し、中国派の田中、加藤を追い出し、ロシア派の鈴木をたたき、続いて郵政族を自民党から追い出した。今や自民党は小泉に代表される右派対米売国派の“独裁”体制となった。

 彼らは郵政民営化で日本国民の金融資産をアメリカに“上納”し、日本企業と経済をアメリカ金融資本の支配にゆだねようとしている。その上に改憲と日米同盟の地球規模での強化・再編で日本は米軍の出撃基地となり、自衛隊は米軍の支援部隊として動員される道を切り開こうとしているのである。

 自民党の新改憲草案は、まさに“属国改憲案”と呼ぶべき売国的なものである。

 草案が環境権や個人情報の保護、犯罪被害者の権利など「新しい権利」を盛り込んだのは改憲のために国民的合意を欺瞞的に形成するためである。

 同様に草案が改憲手続きの国会発議の要件を、衆参各院の「3分の2以上」から「過半数」に緩和しているのは、全面改憲に向けたハードルを下げる段階性を考慮したもので、改憲のホップ、ステップ、ジャンプのうち、今回は第一歩と位置づけていることを示している。

 自民党はその属国改憲案の全体像を国民に公表する義務がある。今回の自民党改憲案は、アメリカのための売国的改憲案であるため、まず改憲のハードルを下げることと、日米同盟の地球的規模での強化と関連する分野だけ改憲することを狙いとしているのである。改憲は対米自立政権ができた後の課題であり、自民党案による従属憲法の手直しはアメリカのための“戦争の道”であり、それは日本を亡国へと導くものである。

 自民党の属国改憲案の狙いを広く暴露しなければならない。