No.52(2005年9月号から)

戦争が生んだ“人災”か、温暖化無視の“天罰”か !?

米ハリケーン被害


 8月29日にアメリカ南部に再上陸した大型ハリケーン「カトリーナ」のもたらした惨状に世界中が驚いている。

 ルイジアナ州ニューオリンズでは市街地の大半が冠水し、多くの人々が逃げ遅れた。いや逃げ遅れたというよりも貧困層には自動車がなく非難できなかったのである。

 報道によれば多数の人々が逃げ込んでいる避難所に4日経っても水や食料が届かず、体力のない老人や子供、病人が多く死亡している。被災者達は水と食料や衣類を求めて略奪に走り、「無政府状態」となっている。非難施設内でも暴行が横行し、襲撃を恐れて警察バッジを返上する警官も多くて、治安が崩壊したのである。

 こうして被災地は文字通り弱肉強食の社会となった。

 テロ対策を優先し、堤防強化のための予算は付けず今回の被害を招いたブッシュ政権に「人災」(ニューヨークタイムズ社説)との非難が集まっている。とりわけイラク戦争のために州兵がイラクに派兵されていたため、本来救援活動を行うべき州兵が不足し、しかもその投入も遅れ、ニューオリンズには5日も経ってから水や食料が届けられたが、すでにその時には多数の犠牲者が出ていたのである。

 ブッシュ大統領は「テロ対策」として「米連邦緊急事態管理庁」(FEME)を国土安全保障省の管轄下に置いたが、これが失敗だったことが明らかとなりつつある。それまではFEMAの災害に対する素早い対応は世界中の評価を集めていたのである。

 しかもニューオリンズ市が堤防強化と洪水管理のための180億ドルの予算の必要を求めていたのに連邦政府がこれにまったく予算配分しなかったのは、イラク戦争の作戦費用が月額56億ドルもかかかり、ベトナム戦争最盛時の平均額(51億ドル)を上回る規模になっている結果であった。

 つまり、アフガンとイラク戦後の戦費を捻出するために、国内の災害対策費が削減されていること、地球温暖化によってハリケーンや台風が増加しその規模が巨大化していることを指摘しておかなければならない。

 ブッシュ政府は石油産業の利益を代表して地球温暖化対策に反対し、独善的で傲慢な態度を貫いてきた。今回のハリケーン被害は“人災”であるが同時に“天罰”とも言えるのである。

 米マスコミも、民主党も、ブッシュ政権のハリケーン被害への対応が「適切でない」との批判を強めている。

 今回のハリケーンの死者数は数千人に達すると言われており、今後被害実態が明らかになるにしたがって、ブッシュ政権への支持率が低下し、イラクからの撤退を求める声が高まることは避けられない。ハリケーンはアメリカの産油地帯に深刻な打撃を与えており、石油市場への投機の拡大もあってガソリンが急騰し、アメリカは石油危機の様相を示している。

 ハリケーン被害の前からニューヨーク取引所の石油先物相場は1バーレル、70ドル台を突破していた。

 ブッシュ政権は石油産業の利益のために戦略石油備蓄の取崩しを回避してきたが、今回のハリケーン被害で備蓄放出に追い込まれた。

 石油高によるアメリカにおける資源インフレの本格化と経済への打撃が、景気と株価にマイナスの影響を及ぼす可能性を見ておかなければならない。その上に今回の被害における数十万人もの難民の発生がアメリカ国内の住宅バブルにどう作用するのか?注目される点である。更に重要なことは、ブッシュの“反テロ戦争”の覇権主義路線の転機となるのか?という点である。

 ハリケーン「カトリーナ」が浮き彫りにしたものは、貧困と災害と「無政府状態」の下で社会的弱者が犠牲となっているという、発展途上国と同じことが、超大国アメリカで起こったということである。

 ブッシュの覇権主義が貧富の格差の広がりを生み、アメリカ国内にまで「南北問題」のような社会的分裂、弱者を犠牲にした繁栄の縮図を生み出していることである。

 アメリカにおけるグローバル化による野蛮な資本主義化が生みだしている矛盾にアメリカ人民が今後どう動くのか、注目される点である。

 先進国であろうが途上国であろうが、自然災害の犠牲になるのはいつも貧者であること、アメリカ型のエネルギー多少費型の大国が地球温暖化対策に取組む世界中の動きを無視してきたことのツケは大きいと言わなければならない。

 アメリカの今回のハリケーン被害は、一言で言えば、ブッシュ覇権主義が招いた“人災”であり、同時に天罰と言えるものである。