No.51(2005年8月号から)

郵政民営化法案の否決と衆院解散

オールキャッチ政党と「構造改革」の矛盾の爆発


 郵政民営化法案は、8月8日参議院本会議で反対125票賛成108票の大差で否決された。自民党議員のうち30人が反対もしくは棄権にまわった。小泉首相はただちに衆院解散総選挙に踏み切った。

 小泉は衆院で反対票を投じた前議員を公認しないと断言するとともに、これら造反議員を落選させるために「刺客候補」をたてている。

 自民党という政党は、大企業・大金持ち・中小企業や商店から農民まで、いわゆる族議員で構成された“オールキャッチ政党”である。

 その自民党がアメリカと大企業・大銀行と大金持ちの利益を代表する大ブルジョア独裁への移行を意味する「構造改革」を推進する小泉を、人気目当てに党首に選んだことが今回の結果を導いたものである。つまり族議員(郵政、建設、農村など)は、小泉を選挙の顔として利用した結果、自分たちの利権を削減される事態を招き、造反に追い込まれ、決定的対立を招いたのである。

 小泉は最初から解散を狙っていたふしがある。郵政民営化法案が通らなければ(造反すれば)解散すると最初から言っていたのは、大票田の郵政特定局長会などの圧力を増大させ、造反しやすくしたものである。同様に小泉が民営化法案の修正を拒否し、法案を継続審議にするのを強く拒んだのは解散による郵政族議員の追放が狙いだったからである。

 小泉や竹中らが主張する“小さな政府”とは何か?それは社会の富を大ブルジョアが独占することである。公的所有を私的所有にすることであり、別の側面では地方切り捨てである。戦後日本経済の高い成長は、金持と大企業から高い税金を取り、その財源で公共事業を行うこと、すなわちシャウプ税制による富の再分配がより平等な社会、大きな内需を作ったのである。アメリカの経済学者は社会主義のような資本主義という意味で「修正資本主義」と言った。

 日本の経済成長に脅威を感じたアメリカは、プラザ合意でドル安円高と低金利を約束させ、バブル経済を招き日本の経済成長の芽をつみ、アメリカが金融支配するために「構造改革」を要求した。その「改革」とは富の再配分をやめ、アメリカのように大ブルジョアが社会の富を独占する「弱肉強食」の社会をめざすものであった。その主要な困難は、「改革」をオールキャッチ政党の自民党にやらせるしかないことであった。自民党の族議員は予算のぶん取りと利害調整を任務としている、したがって「構造改革」を進めれば、自分の支持基盤を切り崩すことになる。これが、小泉政権が最初から抱える自己矛盾であった。小泉が公明党に依存を深めたのは族議員への対抗策であった。

 したがって小泉は常にこの自己矛盾を詭弁でごまかし、妥協で切り抜けたのであった。しかし今回の郵政族は自民党有数の選挙基盤であるため公明党=創価学会の票の力が通じず、解散総選挙で一掃するしか手が無かったのである。

 今回の解散が「自爆解散」とか「やつ当たり解散」などと言われているのは、小泉の解散の狙いが分かりにくいことからきている。

 衆院を解散しても、参議院の勢力図に変わりなく、したがって小泉と公明党が総選挙で過半数を取ったとしても郵政民営化法案は国会を通過できないのである。今回の総選挙による「刺客候補」の意味は、党内の小泉独裁確立のためであり、狙いは参院郵政族議員の造反封じ込めにある。造反すればどうなるかを、衆院の造反議員の政治生命を絶つことで屈服させようとしているのである。

 見逃せないのは、小泉の政治手法が、かって彼らが共産党を「独裁」と批判した「民主集中制」(=少数は多数にしたがう)以上の、党内に少数意見の存在を認めない“郵政民営化独裁”とも言うべき手法を取っていることである。

 毛沢東は「造反有理」(造反には道理がある)と主張し、少数意見を尊重・支持した。これが権力的立場にある者の謙虚な立場である。

 小泉の独裁的手法は議会制民主主義と相容れない。小泉は議会(参院)の採決を認めず、権力的政治手法で踏みにじろうとしているのである。

 民主党も「改革」反対派と賛成派が同居しており、政権の受け皿である民主党が過半数を取ったとしても「改革」は難航する。つまり小泉の独裁する自民党か、もしくは政党再編によって大ブルジョア政党を作らなければならないのである。

 アメリカの各放送や新聞が「日本の激変につながる解散」と報じているのは、自民党(オールキャッチ政党としての)の大ブルジョア政党化のことを意味しているのである。

 日本の労働者・人民にとって重要なことは、「弱肉強食」の野蛮な資本主義をめざす「構造改革」はアメリカと日本の金融資本の利益を代表するものであり、とりわけ郵政民営化は、日本の金融資本とアメリカが結託して、郵貯・簡保の430兆円の資金略奪を狙うものであり、民族的利益を売りわたす売国的本質を持った政策であり、その法案の否決はすばらしいことであり、したがって小泉の総選挙による“巻き返し”をゆるしてはならないのである。

 民営化という政策は、国有財産を他の利権集団が奪い取ることであり、この利権争いの背後に、アメリカの金融資本がおり、彼らは日本の資金で日本企業の買収を狙っているのである。

 小泉「改革」とは労働者・人民にとっては大収奪(高負担)であり失業である。中小企業や商店にとっては“なぎ倒し”であり、日米の金融独占だけが“あまい汁”を吸う「弱肉強食」の日本をめざすものである。

 日本のゼロ金利と金融自由化と郵政民営化は、アメリカが計画的に日本の金融的支配のために進めている政策なのである。

 日本の政党政治は、アメリカ型の大ブルジョア独裁による保守二党制とはちがって、オールキャッチ政党の自民党が、宗教政党(公明党)と結んで大衆を詭弁でだまし、大ブルジョアの政治を「改革」と称して進めており、したがって常に徹底性を欠き、妥協を繰り返してきた。しかし今回の「改革」の本丸では、小泉は独裁的党支配で郵政民営化法案の再提出を狙っているのである。

 小泉の衆院解散・総選挙が、自民党の大ブルジョア政党化につながるのか?それとも民主党政権が生まれるのか、あるいは政党再編か、注目される点である。

 日本の場合は、諸階級間の利害調整のほかに、アメリカの従属国として支配者であるアメリカの搾取・収奪から民族的利益をどう守るか、という民族的矛盾を抱えている。小泉は歴代の首相の中でもっとも売国的なアメリカの手先である。

 日本の主要なマスコミが、アメリカによってコントロールされているため「構造改革」や「小さな政府」の本質が米日反動派の大ブルジョア独裁であることが隠されている。日本はアメリカの犠牲(いけにえ)にされようとしている。

 日本の民族的利益を代表する、対米自立のスローガンを掲げる民族政党の登場が望まれる。