No.47(2005年4月号から)

米国防戦略=世銀と日本のODAを覇権に活用

先制攻撃維持し非軍事手段と同盟国を動員


 米国防総省は3月18日、イラク占領の泥沼化の下で新たな脅威に対処する方策をまとめた「国防戦略報告」を発表した。同報告は「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)の基本となるものである。

 報告は「戦略目標」として
1.大量破壊兵器などの米本土への直接攻撃の回避
2.世界中に展開できる拠点と行動の自由の確保
3.国際的な同盟強化
4.米国に好意的な安保環境の確立、を挙げている。

ブッシュ米政権は世界第1位の原油埋蔵量を持つイラクの占領統治を引き続き成功させようとしており、親米カイライ政権を育成している。

 しかし同盟国のイラク駐留軍の撤退が続く中で「有志連合」の再構築をせまられている。

 したがって当面米軍は、イラクに続く第二戦線を開くことを回避しなければならないので、攻撃を避ける「積極防衛」として同盟国との安保協力や人道支援、武器の拡散防止などの予防手段を報告に列記している。

 同時にこうした予防手段による事態打開が失敗した場合「敵を先制攻撃する」ことも明記している。

 報告はまた戦略目標を実現するために「高い能力を持ち、速やかに展開できる部隊」を維持し、紛争を有利に解決する意思を表明しており、米軍が進める兵器のハイテク化と部隊の機動力強化の「トランスフォーメーション」(変革)を戦略の中に位置付けている。

 報告は「米国は戦争のただ中にあり、安全保障上のさまざまな課題に直面している」とし、そのイラク戦争で米軍は自己の力不足を、兵器のハイテク化や軍の変革によってもカバーできないことを認識して「米国は単独で防衛目的を達成することはできない」として「同盟国との新たな国際的パートナーシップを発展させる」としている。

 この「新たな国際的パートナーシップ」とは「有志連合」の再構築と国際協調の回復を示していると思われる。アメリカは単独行動主義による国際的孤立が打撃となっているのである。

 報告は、米軍の規模や態勢について

1.米本土防衛
2.欧州・アジア・中東への前方展開
3.二つの戦域で敵を迅速に倒す能力
4.限定的ながら長期にわたる作戦の遂行力を保持することを挙げている。

 つまり「米国防戦略」報告は、同盟国を動員し、非軍事手段を取るとはいえ、軍事力による覇権追求を捨てたわけでなく、言わば中東支配を成功させるための戦略手直しなのである。

 ブッシュ政権は、イラク戦争時の国連批判で知られる強硬派のボルトン国務次官を次期国連大使に指名し、国連に「衝撃」を与えた。

 3月16日には世界銀行(IBRO)の次期総裁にネオコン(新保守主義)のポール・ウルフォウィッツ国防副長官を起用し、第三世界諸国やEUの反発を招いた。(注・アメリカは世銀総裁を選出する権利を持っている。)  アメリカはイラク占領と統治とそれへの協力に世銀を利用しようとしている。

 3月19日には来日したライス国務長官が「民主化推進」をアジア戦略の軸に据え、そのパートナーに日本を位置付けた「日米戦略開発同盟」構想を発表した。

 同構想は、日本の巨額のODA(政府開発援助)を米戦略に活用する思惑から、日米が「緊密に協調」しようというもので、軍事面だけでなくODAでも日本に協力させるものである。

(アメリカ政府が「民主化推進」とか「民主主義の拡大」と言う時、それはドル支配権の拡大のことである。)  こうした最近のアメリカの人事と外交に、ブッシュの戦略の建て直しが反映している。

 アメリカの戦略の中心は、引き続き中東支配(=エネルギー戦略)であり、EUの東方への拡大と経済・政治統合によるドル離れに対抗し、覇権を維持することであり、今回の「国防戦略」はその修正なのである。

 アメリカの言う「新たな国際的パートナーシップ」について、ライス国務長官は、日本を「カギとなるパートナー」と位置付けている。

 アメリカは世界第二の経済力を持つ日本の力を、自己の戦略に取り込むことで、自身の力の相対的弱体化に対応しようとし、小泉が「日米同盟の強化」「世界の中の日米同盟」と称してそれに全面追従・協力している。

 したがってこの米戦略下の属国日本は、対米自立によってアメリカの戦争路線から離脱しなければ、これまでの平和主義を貫くことが出来ない局面を向かえているのである。

 日本における保守勢力の9条改憲策動は、アメリカの戦争に協力するためのものである。戦後日本の平和主義が今危機にある!  日本はアメリカの戦略に取り込まれてはならないのである。