No.46(2005年3月号から)

属国日本を米戦略に組み込む「共通戦略目標」

背景に世界的戦略関係の変化


 日米両国は2月19日に日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、アジアと世界で日米が一体となって軍事対処するための「共通戦略目標」について合意し発表した。

 合意された日米の中心的な戦略目標は、

1.国際テロや大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散といった新たに発生している脅威への対処。
2.アジア太平洋地域における不透明性や不確実性への対処

である。
 「共同発表」によると,日米の共通の戦略目標には更に以下の点が含まれる。

(1)アジア太平洋地域における平和と安定
(2)朝鮮半島の核計画、弾道ミサイル問題
(3)台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決
(4)中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す
(5)北方領土問題の解決を通じて日露関係を正常化
(6)東南アジアを支援
(7)不安定を招くような武器及び軍事技術の売却及び移転をしないよう促す
(8)海上交通の安全
(9)国際平和協力活動や開発支援における日米のパートナーシップを更に強化する
(10)大量破壊兵器及びその運搬手段の削減と不拡散を推進

 以上のような日米の共通戦略目標の下で今後自衛隊と米軍の「役割や任務、能力について検討」し米軍の編成の見直しを進めることになる。

 こうした日米の戦略協議は、小泉首相がアメリカの首脳に呼応する「世界の中の日米同盟」「日米同盟は世界の平和と安定の礎(いしずえ)」の具体化といえるものである。

 既に日本政府は昨年末に新「防衛計画の大綱」を決定しており、その大綱は自衛隊の海外派兵を「本来任務」に位置付けている。

 とくに今回の戦略会議が注目を集めたのは「台湾海峡」問題の平和的解決を日米安保の「共通戦略目標」に盛り込んでいることである。中国政府はこのことについて日米安保が二国間の枠組みを超え、中国の国家主義の枠内の問題を加えたことに内政干渉として「断固反対」している。  「戦略目標」が主要には対中国、対北朝鮮に向けられたものであることは明らかである。  協議ではライス米国務長官が、「地球規模のパートナーとして新たな脅威に対処する」と繰り返し言及したといわれている。この発言に示されているのは日本がアメリカの覇権戦略に組み込まれたことであり、「日本はミサイル防衛を高度に自動化し、アメリカのシステムと統合すべきだ」(シュナイダー米国防長官顧問)との要求、更には米軍から出されている米軍と自衛隊の役割分担及び在日米軍基地の移転や再配置はその具体化なのである。  今後数ヶ月かけて2プラス2でこれらの作業が進むことになる。その後、秋に予定されている日米首脳会談による新たな日米安保共同宣言の発表へと日程が組まれている。  重要なことは、日本の米戦略への組込みは、日本の憲法と矛盾する集団的自衛権のなし崩し的容認、もしくは政府解釈の変更につながること、更にはアメリカが日本の「普通の国」化をどこまで認めるかという問題に直面する。

 これについてはアメリカ政府内で対アジア・太平洋戦略の立案に携わってきた米国防大学のジェームズ・プリスタップ(ヘリテージ財団のアジア研究センターの責任者)は、「日米同盟は米英同盟のようになるべきだと思うが、決して日本が米国のような核保有国になることを期待しているわけではない」と語っている。つまりアメリカは日本を自立させる気はなく、属国のまま自己の戦略に奉仕させようと考えているのである。  米軍と自衛隊の基地共同利用による一体化とミサイル防衛システムの一体化は、日本の属国固定化の狙いが秘められている。

<再編・流動化する世界の地政学的力関係>  戦略協議による地球規模での日米同盟推進の背景にあるのは、第一にEUの経済・政治統合と、それによるフランスやドイツのイラク戦争への反対、トルコの基地提供拒否で北大西洋条約機構(NATO)がもはやアメリカにとって軍事同盟として機能しなくなったこと。

 第二にプーチンのロシアが国家主義的傾向を強め、イラク戦争に反対し、アメリカの敵国であるイランと関係を強め、更には自国通貨ルーブルをユーロに連動させる新制度を導入したこと。

 第三に資本主義の市場経済化による中国とインドの発展である。

 これらによる世界の地政学的な戦略関係が多極化へと急速に進んでおり、アメリカの一極支配は危機に直面していることがブッシュの日米同盟重視の動機なのである。

 更には米軍の変革(トランスフォーメーション)の要因としては、情報ネットワークの発達、長距離精密兵器の普及、敵レーダー回避能力の向上、戦闘ロボットの開発など軍事技術面での革命的発展が米軍の少数精鋭・機動化による再配置を要求している。  この米軍の変革に日米同盟をセットにしているのである。つまりアメリカは、自立しつつあるEU、強いロシアを目指すプーチン、アジアの盟主の地位を目指す中国の地域覇権主義、これらの多極化勢力に対抗する上で、世界第二位の経済力を持つ日本に属国のままでアメリカの戦略に軍事協力させる道を追及しているのである。  ブッシュは、イラクの泥沼化の中で米国内の高まる撤兵圧力をかわすために、又イラクでの経済的負担を軽減するための「米欧強調」を演出する外交をおこなった。しかし、今も米欧間の対立は依然として無くなっていないし、この協調は戦略関係を変更するものとならない。

 イタリアの女性記者がイラクでゲリラ勢力に拉致され、一ヶ月ぶりに開放された後、帰国途上でアメリカ軍に銃撃を受けた事件は、イタリア人民の反米の声を高めており、ブッシュにとって打撃となっている。

 ブッシュとネオコンの戦略である北東アジアから東南アジア、インド、中東に至る「不安定の弧」は、EUとロシア、中国の多極化「連合」をにらんだものである。この可能性を高めている「連合」の巨大な市場と軍事力を考えた場合、日米同盟なしにはアメリカは覇権国としての地位を守ることは不可能となっている。

 日本にとってはアメリカの戦争体制への組込みは、戦争の道であり、同時にそれは亡国の道にほかならず、自立と平和を目指す日本の広範な人々は、日本の民族的生存のために小泉とブッシュの「世界の中の日米同盟」を許してはならないのである。  日本は対米自立による平和主義を民族の存続をかけて目指すべき局面にきているのである。