No.45(2005年2月号から)

2正面回避するイラク重視の協調外交へ

戦争の重荷かかえる2期目のブッシュ政権


 ブッシュ大統領の就任演説と一般教書演説の特徴は2期目の同政権がイラクの軍事占領を続行する事を最優先し、戦略的な敵を当面はつくらず、中東以外は外交を重視し、欧州との協調回復を外交の課題としていることである。

 ブッシュは「自由の拡大」「民主化の拡大」を掲げて「圧制」に反対することで自己の覇権のための石油資源の略奪という強盗に等しい行為を隠そうとしている。

 ブッシュが強硬姿勢を見せたのはイランとシリアに対してであり、「テロリストをかくまい大量破壊兵器を追い求める体制とは政策対決しなければならない」と恫喝したのは、イラク人民の反占領のゲリラ闘争への支援を恐れているのである。

 イラクの人たちの反抗が「テロ」なら、アメリカ軍は国家テロをやっている事になる。  ブッシュが一般教書演説で対北朝鮮政策として強硬姿勢を控え、外交による解決を主張し、イラク以外に当面戦略的敵を作ることを回避したのは、超大国とはいえ2正面作戦をとれない力の限界を知ったからである。

 イラクが泥沼化している状況では、アメリカは当面自己以外の軍事大国をつくらないことを外交面で優先するしかない。

 政治統合を進める欧州(EU)をにらんで中東の石油を支配し、ロシアの大国化を防止するためウクライナや中央アジアの国々のロシア離れを画策し、アジアの大国中国には市場経済化で戦略的脆弱性を強めさせ、経済大国の日本には北朝鮮を敵対させ、極東における冷戦構造を当面温存することで日本の属国固定化を計る。こうしてイラクの占領とカイライ政権の選挙による合法化を進めることが手直しされたアメリカの覇権戦略なのである。

 イラクにおける選挙は、実際に選挙登録した人数は極めて少数で、当初72%と発表された投票率はまったくのデタラメで、実際の投票率は過半数を割るほど低かったことが明らかになっている。

 ブッシュがイラク選挙の「成功」を演出したのは、軍事占領の正当性と「民主化」「自由」を印象づけるためであった。

 アメリカは長期にイラクに居座る口実に「自由」「民主化」の拡大を欺瞞的に用いているのだ。

イラクのファルージャで罪のない住民を虐殺した者が「自由の伝道師」に自分をなぞらえている。

 2期目のブッシュ政権は、この口先の強硬姿勢とは別に、中東以外には強硬姿勢を控え、外交重視であるのが特徴的である。

こうした力の覇権主義の“外交的手直し”は、アメリカがイラク戦争を通じて自己の力の限界に気づいたからであり、したがってそれは彼らの弱さの現われなのである。

 ブッシュが一般教書演説で、年金給付を切り下げ、年金資金の運用の個人責任制へと年金制度の抜本的な改悪を提案したのは、野党民主党の選挙基盤である「ニューディール体制」を切り崩し、共和党の長期政権に道を開き、それによってアメリカの一極世界支配の戦略を長期に追及しようとの狙いがある。

 ブッシュの「小さな政府」による金持ちへの減税の恒久化と年金制度の改悪は、アメリカの国内的分裂を一層進める事になるのは避けられない。

 大義なき戦争による、増え続ける戦死者の遺族に、弔慰金の増額でごまかすことは無理であり、遅かれ早かれイラクからの撤兵を模索しなければ、アメリカが消耗を続ける事に耐えられなくなるであろう。アメリカの”双子の赤字“は危機的に増大しているのである。

 選挙でカイライ政権の合法化を策動しても、反米のシーア派が勝利するのでは、自己矛盾というものである。

 イラクの困難な状況を外交で打破できる状況ではない。国連無視の一国行動主義が失敗したから今度は国際協調だというならイラクから撤兵してからにすべきで、中東の支配を続けながら協調外交では身勝手というものである。

 アメリカ自身の核保有には触れずに、他国の「核の野望」の放棄を外交で迫っても、そこには身勝手な二重基準をごり押しする超大国の傲慢が世界の反感を一層強めるだけである。

 自衛隊のイラク派兵を「日本の力強い支援でイラク国民が投票できた」と、役に立たない自衛隊を評価しなければならないほど、アメリカは世界で嫌われ者となり孤立しているのである。

 ブッシュの悪夢は、全世界的な反米統一戦線である。ブッシュがEU訪問で欧州との同盟関係を回復できるか、注目される点である。