No.44(2005年1月号から)

暴露された保守政治家の放送“検閲”

政治圧力で従軍慰安婦番組を改ざん


 1月12日付朝日新聞は、NHKの旧日本軍慰安婦問題を取り上げた「問われる戦時性暴力」という番組内容が、自民党の阿部晋三、中川昭一らの政治圧力で改変されたことを報じた。

 朝日新聞によれば安倍や中川ら保守右翼政治家は01年1月下旬戦前の日本軍国主義の侵略戦争を美化し、歴史の事実をゆがめようとNHK幹部を呼びつけ「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするように、それができないならやめてしまえ」と放送中止を要求した。この発言は安倍・中川本人が発言を認めている。

 NHKはその後完成していた番組を局内で局長らが試写を見た後番組内容の変更をチーフ・プロデューサーに指示した。さらに翌日には3分間の追加カットを指示した。

 NHK幹部が政治圧力に屈してカットした部分は(1)慰安婦制度が「人道に関する罪」を構成すると認定し、日本国と天皇に責任があるとした部分。(2)中国人や東ティモールの元慰安婦の証言(3)元日本軍兵士の慰安所や強姦についての発言(4)国連人権委員会が「慰安婦」問題で日本政府が責任を取るべきと求めているが日本政府は答えていない。とした発言などである。

 安倍や中川らの右翼政治家のこうしたNHKへの政治圧力は、憲法21条言論・表現の自由の第二項「検閲はこれをしてはならない」に反しており、戦前の日本軍国主義の犯罪を隠そうとして、自らの政治圧力による“検閲”を当然のように行使する彼らの軍国主義的体質を露呈している。「隠せば現れる」とはこのことである。

 ロイター通信は1月13日東京発のこの次期首相の最有力候補のNHK番組への事前検閲、介入問題を権力による「メディアへの検閲」に憂慮が強まっていると世界に配信した。

 問題が大きくなり、首相候補としての資格・資質にもかかわる問題となって安倍・中川とNHK幹部は結託して、会見は放送3日後の2月2日が最初で「政治圧力を受けて番組を変更した事実はない」「捏造」と言い出した。

 しかしそれだと安倍・中川らが発言を認めたことと矛盾する。彼らは放送を「やめてしまえ」と放送後に言ったことになるではないか。

 自民党の政治家は恥知らずにもこれまで南京大虐殺を否定したり「従軍慰安婦」問題を否定してきた。それは彼らが再び日本を戦前のような軍国主義国家にしたいという願望に基づくものである。

 したがってNHKへの圧力を当然戦前と同じ政治権力による“検閲”という手法をとることになる。

 このような政治家が首相最有力候補というのだから、自民党の政治家のレベルも下がったものだ。

 最近マンションへのビラ配布という、およそ罪に問うようなものでないことで逮捕・起訴するような事態が起きていることと考え合わせると、政治家もNHKも公安も民主主義を尊重することの重要性を無視し、戦前の反動的支配へと回帰しつつあるように見える。

 それにしても中立を売りにするNHKの権力への忠犬ぶりは度を越えている。NHK教養部長は試写の後「このまま出したら皆さんとはお別れだ」と首にするといわんばかりに改ざんを要求したという。簡単に権力にひざを屈する体質だから数々の不正も発生するのではないか。

 NHKの報道の自由・言論表現の自由という民主主義の根幹にかかわる問題への責任が問われており、NHKは事態を糊塗するのではなく真相を全面的に明らかにする責任がある。

 政治家が日本民族の尊厳を守ろうとするなら姑息な歴史の書き換えや放送統制ではなく対米自立をこそ掲げるべきである。右翼政治家は恥を知らねばならない。