No.42(2004年11月号から)

避けられない世界の混乱の果ての多極化

ブッシュ再選がもたらすもの


 ブッシュ大統領が再選を果たした。それの持つ意味はファルージャの悲劇に示されている。

 ブッシュとネオコンは、ソ連崩壊後の世界において軍事力による覇権の確立を目指し、それを「反テロ戦争」として推進している。

 ブッシュ陣営の勝利を戦術的に見れば、前回大統領でブッシュ側が取りこぼした宗教右派(キリスト教原理主義者)の票400万票獲得を目指し、戦時の大統領を強調し「イラク戦争で世界はより安全になった」とでたらめを主張し、またキリスト教を信ずる人々に向けて妊娠中絶や同性愛の禁止を掲げた。投票日直前にオサマ・ビンラディンの「新たなテロ攻撃」を予告するビデオが放映されたことがブッシュ支持を高めた。

 この結果ケリーが制した州は現世主義的な都市部である西海岸と北東部に集中し、宗教色・保守色の強い中西部や南部の広大な農村地帯ではブッシュが勝利した。

 アメリカの中西部や南部の人々はアメリカが世界の平和と民主化のために闘っていると信じさせられている人たちである。

 アメリカをのぞく世界の人々がケリーの勝利を願ったのは、ブッシュとネオコンの覇権主義が世界をメチャクチャにすることがわかっていたからであった。

 今回の大統領選でアメリカ社会の分裂が」より進み、リベラルと保守の対立がより鋭いものとなっていることが明らかになった。

 ブッシュ・ケリーとも選挙後に両陣営の和解を呼びかけたが、現状では「二つのアメリカ」と呼ばれる二極化したアメリカ社会は覇権主義の産物であり、利害と価値観の対立を背景にしているため和解は不可能である。

 アメリカには戦争によって利益を受ける人々がおり、また単独行動主義によって、EUなどの同盟国との強調が崩れたことで、経済的被害をこうむる人々がいる。またグローバル化にともなう産業の空洞化で破産し、失業する人々がいる。貧富の格差はブッシュ政権下で拡大している。

 アメリカ社会の分裂は、ブッシュとネオコンの世界支配を狙う反動的で野心的な政治が生み出したものである。

 ブッシュ米大統領は再選直後の記者会見で「反テロ戦争」の継続を党派を超えて推し進めることを表明している。ファルージャにおける米軍の殺戮(さつりく)はその象徴的表れである。

 したがってブッシュ当選後の世界は米英日の“新三国同盟”と呼ぶべき侵略勢力と、これに反対するEUと発展途上国の反米国際統一戦線との対立を顕在化しながら、中東を混迷へと導くことになる。

 イラクの泥沼化でアメリカは力の限界に直面している。彼らが軍事力による覇権を追求すればするほど、アメリカの軍事力は分散と抵抗による相対的弱体化に直面し、経済は疲弊していくことになる。

 アメリカ経済の軍事化はまた一層戦争政策の推進力となる。

 ブッシュ政権の日米同盟重視はこのアメリカの力の相対的分散と弱体化を補う狙いがある。

 米軍の「変革」とは、冷戦型の軍隊を覇権追求型に再編することであり、同時に属国日本の戦略的取り込みでもある。

 小泉の対米従属は、本質は亡国といえるものであり、今日本が必要としているのは対米自立の戦略なのである。

 日本の貿易立国は、反テロ戦争に協力するものは味方であり、協力しないものは敵とするブッシュの二元論的志向の下では成り立たず、日本の支配層は、対米追従派と自立路線による国際協調派へと分化していくであろう。

 ブッシュ米政権は再選によって軍事覇権主義が認知されたとしてなお暴走を続けるものと見られる。

 ネオコンは中東の民主化と称してイラクに続きイラン・シリア・サウジの支配を目指している。しかしこの路線は世界の人々とりわけアラブの人々の強い反抗を生み出し、同時にアメリカの財政・通貨危機を深めていくことになる。

 したがって米覇権主義の攻撃は長くは続かず、遅かれ早かれ転換(息継ぎの平和)は避けられない。

 転換しなければ世界は混乱の果てに多極化の時代(=合従連衡の時代)をより早く迎えることになるであろう。

 ブッシュの“強いアメリカ”の弱点は、国内的分裂とドル崩壊の可能性にある。ドル支配を維持し石油資源を握るための戦争が、国内的対立を深め、ドル支配の崩壊を促すという矛盾をアメリカは抱えているのである。

 パウエル米国務長官とアーミテージ副長官の辞任がブッシュ政権内のネオコンの影響力の増大となるか? 今世界が注目している点である。事態は世界の戦略的変化を促す方向に進むであろう。