No.41(2004年10月号から)

世界経済の成長を阻害する原油高

詐欺的手法で日本企業の支配策す


 原油価格の騰勢が続いている。ニューヨーク商業取引所の原油市場は9月28日、1バーレル50.35ドルと83年の取引開始以来の50ドル台を記録したのである。ここ1年半ほどで原油価格は2倍に上昇している。

 今回の原油価格値上がりの背景を見ると、(1)イラク情勢の混迷でイラクの原油輸出が回復していないこと、(2)中国の経済成長に伴う需要増(3)OPECの増産で供給余力が乏しくなったこと、(4)アフリカ最大の産油国ナイジェリアの政情不安(5)米南西部へのハリケーンの影響で、メキシコ湾地域の生産停止でアメリカの原油在庫が落ち込んだこと、(6)原油市場の騰勢に、ヘッジファンド等の投機資金が原油先物市場に流入し、原油の金融商品化が進んだこと、等が重なったものである。

 世界経済が、アメリカと中国の成長に引きずられる形で回復し、その結果石油需要は増加しているのに、その反面政治的理由等で供給が乱され、生産能力の増強が遅れていること、さらにはアメリカのイラク侵略が国際投機筋の原油市場への大規模な投機を招いたといえる。

 今回の原油価格の上昇で、巨額の利益を手にしているのが中東やロシア等の産油国とメジャー(国際石油資本)国際投機集団である。

 反面原油高は減速し始めた米経済への下押し圧力として作用し、コスト高となって企業業績を圧迫することになる。さらには原油輸入依存度の高い日本、韓国、フランス、ドイツ等も経済的痛手となるのは避けられない。つまり世界経済は原油高で先行きへの懸念が強まっているのである。

 特に注目されるのはアメリカでガソリン価格の上昇で個人消費が減退するようだと、経済の減速を早め、雇用情勢を悪化させ、ブッシュの再選が危ういことになるかもしれない。

 10月初めに開かれた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、原油価格の高騰による景気の下ぶれリスクは残るとの見方から、石油産油国の増産と消費国の省エネルギー対策を要請し、市場の投機をけん制したのである。

 こうしたG7の要請で原油価格の騰勢が抑制できるのか、注目される点であるが、10月5日のNY原油は1バーレル51.29ドルと、その後も上昇している。

 原油価格の騰勢が長期に続くようだとアメリカや中国の成長に影響を与え、両国への輸出で成長に向かい始めた日本や欧州の、経済の先行きが怪しくなるであろう。

 アメリカ政府が原油の供給途絶に備える戦略石油備蓄(SPR)の本格的取り崩しにいつ踏み切るのか、注目される点である。つまり、原油の高値対策も米大統領選がらみであることを見ておく必要がある。

 今日の原油の高騰が、需給バランスの逼迫を根底にしているだけに、ブッシュがSPRの取り崩しに踏み切ったとしても、高値は続く可能性があるので、その時世界経済の減速懸念が現実化すると見られる。

 アメリカは世界のエネルギーの38%を消費している。ブッシュ政権が炭酸ガス排出を削減する京都議定書に背を向け、またイラク戦争に突入したツケが、彼自身に跳ね返る可能性が生まれていることは皮肉としかいいようがない。

 OPEC加盟国は原油収入が3,000億ドルにもなる見通しで、各国とも石油化学事業や海水淡水化プロジェクトへの投資を計画している。OPEC加盟国は原油高値で潤っているが、しかし原油価格の決定権は、市場動向で左右されている。それはグローバル化と米戦略の結果であり、アメリカの金融資本やファンドが原油を投機の対象とした結果でもある。

 需給逼迫の中でOPECが原油価格に対する決定権を回復することになるのか、注目される点である。しかし今回の原油急騰に国際投機ファンドが重大な役割を果たしているのも事実なのである。

 グローバル化によって世界経済が巨額の投機資金に振り回される状況が生起し、しかもそれが経済成長を阻害するまでになっている事は重大なことである。ヘッジファンド取引の膨張はトバク経済化であり、それと結びついた空前の規模の価値増殖が、世界資本主義の大破綻を招きつつあることに気付かねばならない。

 野蛮な資本主義の最後を告げる鐘が鳴り始めている!