No.37(2004年6月号から)

年金法強行採決の意図

消費税方式への「国民的合意形成」狙う


 政府・与党が当初自信満々に「100年持つ制度」と高言した年金「改革」法案 が6月4日自民・公明の強行採決によって成立した。

 国会審議の中では、100年どころか、出生率や年金保険料の納付率の今後の動 向によっては早い時期の見なおしが必要となる欠陥法であることが明白となっ た。

 政府は国民に、年金水準は現役世代の手取り年収の50%を確保すると説明し たがウソであった。

 保険料は14年間にわたって毎年0.354%ずつ18.3%まで引き上げられ、しかも 給付は削減される。

 なぜ与党はこんな欠陥法を急いで成立させたのだろうか?  自民党と民主党のスポンサーである日本経団連は企業献金を再開し、自分達 に都合の言い政策実現に力を入れている。

 日本経団連の経営労働政策委員会報告は、社会保障制度全体の「改革」を断 行すべきであるとして「特に給付の削減と負担の引き下げという改革は今般で 最後にするという覚悟で取り組む必要がある。負担に付いては、全世代ができ るだけ“広く・薄く”負担するという観点から、財源として消費税を考える時 期が来ている」と言っている。つまり自民・公明・民主の三党合意は、財界ス ポンサーの意向だったのである。

 日本経団連が年金給付の削減と保険料負担の引き下げは「今般で最後にする という覚悟で」といっているのは、年金の消費税方式への一元化の国民的合意 形成のためには、今回のデタラメな「年金改正」を戦術的必要悪と位置付けて いたからなのである。

 「保険料は天井知らず、給付は底無し」と言われる今回の年金改悪がどのよ うな結果を招くのかを見なければならない。

 保険料負担が増えれば企業の保険料負担も年々急増することになる。当然企 業は保険料負担を削減するためにリストラに力を入れ、正社員を削減し、パー トやアルバイトなど厚生年金に加入しない短時間労働者に切り替えていくこと になる(厚生年金の加入対象は週30時間以上働いている人)。その結果は不安 定雇用が増え、年金未加入者が急増することになる。

 つまりは今回の「改正」で年金生活者の暮らしが苦しくなり、老人の全てが それに耐えたとしても、年金リストラとゼロ金利が続くのでは「100年」どころ か、数年で「改正年金制度」は成り立たなくなる可能性は強いのである。

 そもそも政府にとっての年金制度の存在意義は第一に、莫大な年金資金を資 本主義発展の資金として運用することであり、第二に現役世代の保険料で退役 世代の生活を支え、老後の生活を保証することであるが、従属国の日本はアメ リカに低金利を押し付けられているので運用益など出るわけがなく、しかもグ ローバル化(これも従属の結果)で野蛮な資本主義化が進み、貧困化の中で結 婚もできず、子供も作れないという状況下で少子化が進行し、団塊の世代が定 年を迎えるのに逆に現役世代が急減する事態となっている。現行の年金制度を 維持するには、自立して金利を世界の平均金利にすれば運用益は確保できる。

しかし財界が年金負担を逃れるため消費税方式を主張しているのでそれもでき ない。低金利の恩恵を彼ら自身が受けているからである。

 今回の欠陥年金法によって国民の意識を「年金の消費税方式はやむを得ない 」という方向へ、まるで“追い込み漁”のように、国民の認識を囲い込み、2ケ タの消費税を受け入れさせることを狙っている。

 彼ら政治家や大企業経営者が、「広く薄く」などというのは欺瞞的表現で、 消費税はエンゲル係数(生活費中に占める食費の割合)の高い人、すなわち貧 困者ほど負担が重い税率なのである。

 本当に平等なのは所得に応じて税負担が重くなる累進所得税(シャウプ税制 )なのである。高度成長を支えたのはシャウプ税制の起動力にあったのであり 、消費税方式への移行は日本経済が一層起動力を失うことになるのである。

 小泉政権の年金改悪強行が、消費税方式への国民的合意形成を狙いとしてい ることを広く人々に暴露しなければならない。