No.37(2004年6月号から)

米欧の距離埋められなかったサミット

ブッシュの選挙に向けた政策見なおし


 アメリカはイラク占領が泥沼化し、今後の展望が見出せない中でこの秋には大統領選を迎える。

 ブッシュは選挙に向けて政策手直しを行なった。それが(1)米欧の見せ掛けの協調(2)国連決議(3)主権移譲であった。この舞台となったのがシーアイランドでのサミットだった。

 アメリカは、かつて自分が無視した国連を利用するために、欧州に譲歩して安保理のイラク新決議1546を採択した。これによってイラク占領軍は「多国籍軍」となる。その指揮は国連ではなく米軍の指揮下におかれる。つまりは看板を「占領軍」から「多国籍軍」に付け替えたわけである。

 アメリカが選んだイラク暫定政府の中心「国家安全保障閣僚委員会」には米英軍を中心とした「多国籍軍」の正副指揮官が参加し、暫定政府の要所に多数のアメリカ人顧問が参加する。つまり暫定政府には「完全な主権」はないのである。

 アメリカは北大西洋条約機構(NATO)軍のイラク多国籍軍への参加を求めたが、フランスのシラク大統領は「イラクへの介入はNATOの使命ではない」と拒否した。

 ブッシュがシーアイランド・サミットの柱と位置付けていた「拡大中東機構」は中東の親米国エジプトとサウジにそっぽを向かれ、シラク仏大統領には「民主主義の宣教師などいらない」と切り捨てられた。中東問題の核心的課題であるイスラエルのパレスチナ占領・弾圧と破壊と拡張主義をそのままにして、中東の安定・「民主化」は中東の人々には絵空事である。そもそも中東で専制的な政権を石油利権のために支持してきたのはアメリカ自身であったのに、その外交への反省もなく、今度は「中東を民主化」すると言うのだ。 ブッシュのこの演出は、国内向けのものである。

 国連のイラク新決議1546では、フランスの主張によってイラクの石油収入のほとんどが主権移譲後は「暫定政府が唯一支出を決める権限を持つ」となっているが、当の暫定政府はアメリカが選出したCIAに近い人物が首相として入っているのである。主権移譲と言いながら米軍はなんでもできることになっているのである。

 ブッシュは油田地帯を占領するために侵略したのだが占領に失敗したので、それを取り繕うための「拡大中東機構」なのである。

 しかも「民主化」の矛先は、腐敗したサウジ王制と半封建的宗教支配のイランに向けられている。

 結局ブッシュは大統領選に向けて最大限の取り繕いをしたのである。米欧との外交的協力が回復したかのように装い、イラクに民主主義が確立しつつあるように装い、米軍の占領からイラク暫定政府の要請による駐留へと変わったかのように演出し、選挙のために、テロをなくすために「中東の民主化」に努力するポーズを取ったのが、ブッシュにとってのサミットの成果だったのである。

 大統領選で米ユダヤ人の金と票のために、イスラエルの無法に目をつぶる。しかも占領下のイラクで世界最大の人権侵害をやっているものには、本来中東の民主主義を語る資格はない。

 表面上の安保理の全会一致、サミットでの合意の背後には抜き差しならない米・欧の対立と亀裂が存在していることを見て取らねばならない。

 これまで譲歩することのなかったブッシュ米政権が譲歩に譲歩を重ねて得たものは、自国選挙民向けの見せかけだけの「協調」であった。

 重要なことは、このサミットで小泉首相が「多国籍軍」への自衛隊の参加を独断で表明したことである。小泉は首相ポストの延命と引き換えに、なし崩し的に日本を“戦争の道”に引きこんでいるのである。