No.32(2004年1月号から)

日本経団連「経営労働政策委員会報告」

世界市場への野心示す売国独占


 日本売国独占の今年度の方針である日本経団連「経営労働政策委員会報告(以下報告)」の第一の特徴は、これまでの「輸出立国」に変わって「交易立国」と称する戦略を提示していることである。

 奥田日本経団連会長は序文で「日本発の技術や資本を海外に投入し、それを使って日本はもとより世界中で生産を行う」ことを表明している。それはグローバル化と少子・高齢化の下で、これまでの商品輸出から“資本の輸出”へと戦略を転換することであり、同時に「科学技術創造立国」によって日本の科学技術開発によって、より高付加価値生産(兵器生産を含む)へと移行することで、他国との分業を産業構造転換によって進めようとするものである。

 一般的に資本の輸出を進める場合、海外権益を守る軍事力が背景に無ければならないが、売国独占はそれを従属同盟としての日米同盟の全地球的規模への拡大(安保の意義見直し)によって進めようとしている。それを象徴するのがイラクへの自衛隊派兵なのである。

 「報告」の第二の特徴は、「東アジアとの連携強化とグローバル競争への挑戦」として「東アジア自由経済圏の確立をめざす」ことを打ち出したことである。

 WTO閣僚会議が決裂し、グローバル化が危機に直面している中でアメリカの許可が下りたと見られる。

 「報告」の第三の特徴は、「世界の環境保全のため」環境技術の輸出を産業戦略と位置づけていることである。

 第四の特徴は、競争力の強化のため「新タイプの人材育成」に力をいれていることである。

 産学連携の一層の推進もこれまで以上に強調されている。

 第五の特徴は、こうした経営政策上の戦略・方針に対応して雇用面での「多様な働き方」と称する不安定雇用化、規制緩和を引き続き進め、同時に安価な外国人労働力受け入れ等によって賃金の引き下げを提起していることである。

 「国際競争力を保てるような適正な賃金」とか「業績反映した人件費管理」とか「能力・成果・貢献度反映の賃金管理」とは、差別賃金であると同時にベースダウンのことなのである。

 売国独占は国際競争力を高めるために、社会保障面での企業の負担を無くすことを主張し、「広く・薄く負担する」と称して消費税増税を提起している。例えば年金は「間接税方式(注・消費税のこと)に転換すべき」としている。

 労働者の賃金についても「ベースダウンを労使の話し合いの対象」とし、定昇の廃止・縮小を主張している。

 要するに日本売国独占の今年の「報告」は国際競争力の維持・強化のための野蛮な搾取・野蛮な資本主義化をより一層進める内容となっている。

 この報告にしたがって賃下げと労働条件・雇用形態の劣悪化が進めば、日本の貿易黒字は一時的に増えても、すぐに円高・ドル安を招き、国際競争力はまたたくうちに奪い取られ、またもリストラが必要となるのは確実である。

 「報告」は、こうしたアメリカのドル支配の問題には一切触れていないのが最大の特徴といえる。

 これまでの売国独占の「報告」とはちがって今年は資本の輸出という国家独占資本主義の本質としての外への野心を表明したものの、あいもかわらず従属国家ゆえの国家としての戦略が無く、このままではアメリカの一人勝ちの経済システムとしての“グローバル化”に日本が奉仕するだけの結果となるのは明白なのである。

 「東アジア自由経済圏の確立をめざす」と言うが中身が無く、円をこの経済圏の決済通貨とするのか?それすら明確ではない。

 ここにも小泉首相と同様、ひたすらアメリカの顔色をうかがう売国的姿が示されている。

 社会保障制度にしても、ゼロ金利の下で運用益が期待できない中では年金制度の空洞化はさけられないのである。

 日本経済は対米自立しないかぎり活路が開かれない局面となっているのに、小泉政権は労働者・人民から収奪し、アメリカの国債購入でアメリカに奉仕するのみである。したがって展望のない売国独占の姿が、「報告」の全内容なのである。

 自動車整備士の検定試験の問題で不正をした、あのトヨタ出身の奥田が議長をつとめる経営労働政策委報告に「企業に求められているものは、企業論理の徹底である」とあるのは、詐欺師がウソをついてはいけないと説教するに等しいと言わなければならない。

 つまり日本経団連の「報告」は野蛮な資本主義化と対外進出という内容で、対米従属下で利潤を追求する日本売国独占の限界といえる内容なのである。