No.105(2010年2月号から)

台湾への米の武器輸出問題

東アジアの軍事バランスの維持狙う!


   アメリカ国防総省は台湾向けに総額64億ドル(約5800億円)に上る大規模な武器売却を決定し、議会に通告したことを公表した。その内訳は、地対空ミサイル「パトリオット」(PAC)114基330発や対艦ミサイル「ハープーン」12基、多目的ヘリ・UH60ブラックホーク60機などである。

 中国が最も警戒している新型F16戦闘爆撃機の売却やディーゼル潜水艦の設計図は対象外にしており、中国政府に配慮した内容となっている。

 これに対し中国外務省の何悪非次官は30日に、台湾への米の武器輸出について「強烈な憤慨を表明し、両国のさまざまな交流や協力関係に極めて深刻な悪影響を及ぼす」と強く警告した。後に中国は米軍との交流の停止を発表した。

 米中間にはチベット問題など民主化の問題があり、また米インターネット検索大手グーグルがサイバー攻撃や検閲を理由に中国撤退を示唆し、米中両国間の政治問題になっている。この問題ではクリントン米国務長官が中国政府の検索結果の改ざんについて「世界人権宣言に違反する行為だ」として中国を名指しして「検閲を強化している」と指摘している。

 今のところ中国政府はアメリカの台湾への武器輸出については中国本土を空爆する能力のあるF16が含まれるかが「禁止ライン」としており、米中関係を今以上に悪化させることを回避しようとしているように見える。またアメリカは中国に国債を買ってもらわないとやっていけないのである。

 アメリカ経済も不況が続いており軍需産業に配慮して武器輸出を認めなければならない側面があり、中国の最近の軍事力増強、とりわけ1000発を超える台湾向け対地ミサイルの増強が続いている中で、パトリオットミサイルの売却は、明らかに中・台間の軍事バランスを維持しようとの戦略的狙いがある。

 オバマ米政権は国内で深刻な雇用問題を抱えており、昨年12月末には中国製の油井用鋼管に最高16%の関税を課す決定をしている。

 現在アメリカは中国製品82品目で反ダンピング税を課し、12品目で相殺関税を課している。

 オバマ政権の対中国外交は、その多くは内政問題としての側面を持っていることを見ておくべきである。つまりアメリカは中国との相互依存関係を崩す気はないのであり、経済的・政治的・軍事的にも現状維持が主要な側面なのである。中国政府もドル建ての輸出額で今年には初の世界一となる公算が強く、最大の輸出先であるアメリカとの関係を維持したいのである。

 2月1日に発表されたアメリカの「4年ごとの国防政策の見直し」では、戦略として長期化するアフガニスタンとイラクの戦場にまず資源を集中する方針を表面している。この報告からは中国批判が国防総省首脳の手で削除されたと報じられている。

 アメリカはアフガニスタンやイラクで兵士が心身両面で疲弊する中で複数の大規模作戦を展開する余力を失っている。この点についてゲーツ国防長官は、報告公表の記者会見で従来の「二正面戦略」は「時代遅れ」と断言した。

 同報告書は、中国やインドが台頭し、脅威の多様化で安全保障環境が変わる中で米軍の優位性が相対的に低下していると指摘しており、軍の前線兵士が疲弊する現実の中で、同盟国との軍事協力の重要性を訴えている。

 これは日本政府の沖縄の基地負担軽減の方向と矛盾することであり、日米双方の立場の違いが浮かび上がっている。とりわけ先の沖縄県名護市長選で米軍基地移設に反対する候補が当選するなど日米相互の矛盾の解決が難しくなっている。

 トヨタ車のリコール問題での米政府のトヨタ叩きでは自動車産業再建を優先するオバマの内政重視の反映であり、日米関係とは関係がないと見るべきだ。

 アメリカがイラク・アフガニスタン重視で、東アジアでは同盟国の役割を重視している以上、中国の軍事力肥大化には、日本や台湾や韓国の役割を強化して軍事バランスを維持していく方向なのである。

 アメリカの求める日米同盟の強化と鳩山政権の「対等の日米関係」の中身に違いがあり、鳩山政権の日米同盟の強化と沖縄の負担の軽減を統一することの難しさを指摘しなければならない。

 台湾への武器輸出ではなく、中国の軍事大国化を阻止する外交が求められているのである。