No.104(2010年1月号から)

日米関係は危機か?

普天間移設先送り=日米合意見直しの狙い!?


 連立与党内で社民・国民新両党が連携して民主党を揺さぶった。米軍普天間基地の県外移設に固執する社民党に国民新党が加勢した。これで鳩山政権は辺野古案の日米合意見直しに動き、辺野古以外の検討を指示するなど揺れ動いた。

 これに対しアメリカ政府は一貫して日米合意の履行を求めたが、連立維持を優先せざるを得ない鳩山政権は問題の先延ばしとして5月まで結論の先送りを決めた。

 アメリカ政府はコペンハーゲンでのCOP15での日米首脳会談を拒否して強硬姿勢を示した。また鳩山首相のブレーンの寺島実朗氏の「鳩山首相への誤解を解く」目的での訪米にも会見を拒否した。

 アメリカ政府は寺島氏の「日米関係の再構築」を拒否して見せたということである。つまり鳩山政権の「対等の日米関係」に対し、アメリカは自公政権と同じ「対米追随一辺倒」を引き続き求めているように見える。

 アメリカ政府は鳩山政権の日米の密約外交の調査も気にくわないであろう。「密約外交」とは対米従属の結果であり、その調査は日本の自立へと向かうからである。

 アメリカの強硬姿勢に対し、鳩山政権は来年度予算案で在日米軍関係経費を大幅に増やした。前年度比491億円増の3370億円で過去最多にしたのである。在日米軍再編経費(1320億円)も海兵隊新基地建設費(約126億円)も増加した。つまり鳩山政権は予算面でアメリカに譲歩して「誤解」を解こうとしたのである。

 こうした普天間問題をめぐる動きの中で日本のマスコミは「日米関係がきしんでいる」「日米同盟の危機」「日本の安全を損ないかねない」「日米関係深い傷」と書き立てている。一連の日米関係の対立を見るとアメリカは普天間移設が問題なのではなく鳩山首相の「対等の日米同盟」が同盟軽視論だととらえていることである。

 鳩山連立政権は社民党の支持がなければ参院で過半数を失うのであり、そうなれば日米関係を維持するための予算も通過が難しくなるのである。アメリカはこうした事情は分かっており、彼らが問題と見ているのは、アメリカの力がリーマン・ショック以後衰退しつつある中での鳩山首相の「対等の日米同盟」がアメリカ離れではないか?との疑いを持っていることである。

 鳩山首相の普天間先送りの狙いはどこにあるのだろう。鳩山はオバマに「私を信頼してほしい」と語った。しかしこれ以上の説明をしていない。しかし鳩山が米軍基地の県外・国外移転の発言をしたことで北朝鮮や中国は、日本のアメリカ離れを好感している。

 鳩山の普天間問題の先送りは北朝鮮外交のための布石かも知れない。北朝鮮が日朝関係の改善へ舵を切れば、民主党の参院選勝利は間違いないであろう。つまり鳩山首相も小沢も当面参院選の勝利を戦略課題と位置付けているのである。

 鳩山連立政権は、自民・公明の連立政権が招いた経済危機を引き継いだわけであり、当面景気がすぐに回復するわけではないのだから、成果を外交に求めるほかない。

  鳩山首相は、海上自衛隊のインド洋からの給油活動の中止を決め、今また辺野古への米軍基地建設中止の方向を見せている。これらが北朝鮮に向けたアピールとして働く可能性を見ておくべきである。

 日本の政権交代を最も注目しているのは北朝鮮の金正日将軍なのである。恐らくアメリカは鳩山のこうした外交的狙いを読みながらも、日本のアメリカ離れを警戒しているのであろう。外交で二兎を追うわけにはいかないし、北朝鮮のように外交的したたかさを持った国を相手とする場合、日米合作の芝居もありうるであろう。

 アメリカは先に北朝鮮の6ヵ国協議への復帰の外交に失敗している。そのため鳩山の「友愛外交」に期待するしかないであろう。以上の点から自民党が「日米関係の危機」を政権奪回の好機と見るのは完全な誤りである。民主党連立政権とオバマ政権の関係は、相方の立場の違いを考慮した関係と見るべきである。

 たかが普天間のヘリ基地問題で日米同盟がつぶれるわけがない。アメリカは日米同盟なしに世界戦略を維持できないのである。

 鳩山首相が「辺野古の可能性も残っている」と語っているのは優柔不断な態度の表れではなく、揺れ動く様を北朝鮮に見せる事で外交的決断を促していると見えなくもない。

 アメリカはアフガニスタンとイラクで泥沼に突入しており、極東では緊張緩和以外の選択肢は無いのである。したがって鳩山政権の誕生を最大限生かし、北朝鮮を市場経済に取り込む「ソフトパーワー」戦略を展開していると見ることもできる。そのためには日米関係がさも対立しているように見せかけることが不可欠なのである。今北朝鮮の指導者は、世代交代を控えて和平と外交関係の改善を必要としている。

 鳩山政権をどう見るのか?アメリカから離れるかに見える鳩山政権に北朝鮮を含む世界が注目している。