No.104(2010年1月号から)

イエメン・ソマリアが反米の拠点化

戦線拡大する「テロとの闘い」!


   アメリカ政府はイラクに増派し治安の安定化に全力をあげてきたが、その隙にアフガニスタンのタリバンが勢力を回復・拡大した。そこでオバマ政権になってからアフガニスタンに増派したが、そうすると今度はパキスタンで原理主義が勢力を拡大し始めた。

 09年にアフガニスタンでの外国軍兵士の死者は519人と前年比で8割近くも増えた。同政府軍の兵士の09年の死者は523人と前年の倍に増えている。パキスタンではテロによる民間人の犠牲が2281人になり、国連は外国人職員の退避を決めた。

 米軍がアフガニスタンで軍事行動を強化すれば、アルカイダはパキスタンでの行動を強化し、米軍がパキスタンに戦線を拡大すればアルカイダは拠点をイエメン・ソマリアに拡大するという状況になっている。

 昨年12月25日には米デトロイト上空を飛行中の米旅客機内で爆破未遂事件が発生した。この容疑者が「イエメンでアルカイダ関係者から爆薬を受け取り、下着に縫い込んだ」と供述したことから、アメリカはイエメンとソマリアでの軍事協力を強化する方向で動いている。すでに米軍はイエメン内のアルカイダの拠点を空爆したとの報道もある。

 ソマリアのアルカイダ系民兵組織マル・シャバブは、ソマリアの南部と中央部の大部分を支配している。アル・シャバブはイエメンのアルカイダに援軍派遣とアメリカへの報復を表明した。

 アメリカはアフガニスタンとパキスタン北部で無人攻撃機からのミサイル攻撃で多くの民間人を殺し、その結果人々の憎しみを生み、彼ら自身がテロリストを生産している。こうして戦線は拡大し、まるでモグラたたきの様に、イスラム原理主義勢力をアメリカが攻撃すればするほど誤爆も増え、テロリストを生産し、拠点が拡大していくのである。

 アメリカはオバマ大統領がイエメンのサレハ大統領に、ペトレアス米中央軍司令官を通じて書簡を手渡し、昨年の7000万ドル(約63億円)の倍以上の軍事援助を約束した。オバマは1月2日の国民向け演説で「我が国は広範囲に広がる暴力と憎しみのネットワークとの戦争状態にある」とのべて、アルカイダ掃討の決意を示した。

 この先アメリカはイエメンやソマリアに戦線を拡大するのだろうか?アメリカの攻撃とイスラム原理主義の報復の負のサイクルからの脱出は、米軍の撤兵以外には方法がないように思える。つまりイスラム原理主義の軍事的制圧は不可能なのである。ところがアメリカにはイラクの油田に利害を持ち、戦争で儲ける産軍複合体の経済構造がある。戦争で儲ける人々がいる以上簡単に撤兵はできないのである。

 アメリカはグローバル化した市場と資源を必要としているのであるが、すべての人々が自分達のルールを受け入れると考えるのがそもそも間違いである。宗教や文化の多様性を認めなければならない。宗教を力で押しつぶそうとするのは愚かなことである。アメリカは侵略を繰り返してきたため中東・中南米・アフリカは今や反米圏になったのである。

 EUも日本もアメリカの戦争に付き合う愚はできるだけ回避した方がよい。アメリカは「テロとの闘い」と主張しているが、アフガニスタンの人々は米軍の方がテロリストであり侵略者だと考えている。

 今のままアメリカが戦線の拡大を続けていけば、アメリカ経済は疲弊していくことになる。超大国の疲弊と世界同時経済危機の中で、今後世界はどう変わっていくのかを見なければならない。アメリカの衰退は、世界を多極化の時代へと導くのは必然である。

 エネルギーの多様化は、中東の戦略的価値を減少させることができるであろうか?それとも中東とアフリカ等の資源地帯の争奪が再び始まることになるのであろうか?  今中国は、世界中、とくにアフリカの資源を次々と手に入れている。アメリカは中東の石油地帯の戦略的価値に着目しているからこそ「反テロ戦争」を続けているのである。

 日本とEUは、環境問題に最大限取り組むことでエネルギーの多様化・クリーン化を実現して、中東の石油への依存を減少させようとしている。この日本の独自の戦略方向こそ、アメリカが一番警戒していることである。

 アメリカは中東の石油を失っても衰退するが、軍事的消耗も衰退を招くことになる。つまりアメリカは戦略を転換する局面にあるのだ。アメリカが撤兵すればアルカイダも力を衰退させることになる。対立面を形成している米軍とアルカイダは互いに相手を必要としているのである。したがって米軍が撤兵すればアルカイダは存在意義を失うのであり、アメリカは疲弊をまぬがれることができるであろう。

 オバマの「息継ぎのための和平」は中途半端であり、アメリカが経済的衰退を阻止できない可能性を見ておくべきである。一国の戦略的転換は二兎を追うべきではなく徹底性が重要なのである。

 世界の多極化は時代の流れであり、アメリカは多極化の時代の戦略を持つべきで、覇権主義の夢を追うべきではないのである。