No.101(2009年10月号から)

混迷する世界経済の中でのG20

見い出せなかった景気回復戦略


 9月25日アメリカのピッツバーグで開かれた20ヵ国・地域(G20)の首脳会議(金融サミット)は今後G20を国際的経済問題について話し合う最上位の会合に位置付けることを決定した。このことが示しているのは主要先進国(G8)が世界経済を取り仕切る時代は終ったということである。

 今回のG20では、世界経済について「修復の過程は未完了で失業は容認できないほど高いままだ」と指摘し「回復が確実になるまで強固な政策を維持する」として景気刺激策を続けることを確認し、出口戦略は準備にとどめることを決めた。

 G20声明は、アメリカに輸出産業の強化や、民間貯蓄の支援、財政再建の実行を求めている。また中国と日本には国内成長の強化や金融市場の歪みの削減を求めた。

 各国の巨額の公的資金で危機は先送りされ「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」の言葉のごとく株価や原油などに再びマネーゲームの動きが現れている。しかし実体経済は依然として回復しておらず、雇用問題は悪化している現実がある。

 G20がG8に取って代わったことは、中国、ロシア、インド、ブラジルが経済的に台頭し、世界の多極化が進んだことを示している。

 このことはドル支配の崩壊の始まりとも言える変化である。つまりアメリカ市場が世界経済を主導する時代から新興諸国の成長が世界経済を主導する時代がきたという事である。

 ドルの地位は揺らぎ、ドル安の局面がきたということであり、それはアメリカが相対的に経済力を衰退させ、巨大な軍事力を維持できなくなる可能性が出てきていることを教えている。

 アメリカ経済が米・中・日・欧のG4の体制を検討している、と報じられているのは、欧州の戦略的地位を低下させる意図を持っていると見ておくべきである。アメリカにとって「ドルに代わる基軸通貨体制」が語られる時代となった時、ユーロがドルの最大のライバルとなるのであり、アメリカはG4で欧州の発言力の削減を検討しているのである。

 下落を続けるドルを基軸通貨として使い続けることはできないのであり、基軸通貨の多極化は避けられないであろう。

 アメリカ経済は、今後1〜2年は不動産相場の下落が続くと言われており、間違いなく悪化し失業者数が10%の大台に乗るのは確実であり、米政府がドル発行によって金融システムを支える構造は終末を迎えており、ドル崩壊の可能性も否定できない状況にある。

 金融バブルの膨張を予防する国際金融機関の規制や改革は、欧米の対立で進展していない。また世界経済を引っ張ることが求められている日本と中国を見ると、日本は円高で輸出が打撃を受け、現在新連立政権が内需主導に切り替え中であり、中国は輸出の落ち込みが8月の前年同月比2割も減少し、内需の拡大が輸出の落ち込みを埋めるまでには至っていないのである。つまり貿易黒字国の日本と中国も先行きは楽観を許さない状況にある。中国と日本の個人消費の拡大は簡単なことではないのである。

 つまり国際経済の危機からの「出口戦略」は見えていない状況にある。また金融機関のマネーゲームを規制する方策においても高額の賞与の規制すら簡単には進まない状況にある。

 G20は、今年11月にも開かれ、各国が政策を相互に点検する仕組みを協議し、今後G20首脳会合は定例化し、来年は6月にカナダ、11月に韓国で開催することになった。

 以上のように混迷する世界経済の中で発展途上の新興国の発言が拡大するG20が開催されたが、世界経済の景気回復戦略は見い出せない状況が続いている。

 注目しなければならないのはドル安の進行である。日本と中国がアメリカ国債を買い続けることができないかも分からないのだからドル安は避けられないのである。またアメリカの不動産価格の下落が続けば金融危機の再燃の可能性も否定できない事である。

 日本経済は回復傾向と言われるが雇用の悪化や円高など輸出企業にとってのマイナス要因もあり、2番底の可能性もささやかれており、なお不況局面が続く可能性がある。

 世界経済は機関車役不在の状況の中で混迷状態にあるといえる。新興国が世界経済を牽引することは期待に反して難しい状況にある。